生き方040:人はわが祈りの為とて/明恵上人

★人はわが祈りの為とて/明恵上人
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時代や道具は変わっても、相変わらず私たちは「願いを叶えましょう」というものに弱くて、踊らされ続けます。

言うとおりにしたものだけに御利益があると言われると、ふだん理性的な人も道理を引っ込めてしまう。

今はやりの、あれも、これも、そういうものかもしれません。

 

しかしそれが苦しみを作り出す元凶であり、いわば地獄への道であることに気がつかないとなりません。

そんなことに気をとられずに、「いまここ」にある「ありのまま」を良くも悪くも味わうとき、いますぐに解決できないような悩みは現れようがないのです。

 

☆~⌒☆

 

明恵上人(みょうえしょうにん)は、鎌倉時代前期の華厳宗の僧です。

京都の栂尾(とがのお)にある有名な高山寺(こうざんじ)というお寺は、明恵上人が再興して、その後半生を過ごしたお寺です。ここから「栂尾の明恵上人」と呼ばれたりします。

ところで同時代には法然がいます。

法然は浄土宗の開祖であり、絶対他力の専修念仏を主張したのに対し、明恵はあくまで自力による修行が重要であることを主張し法然を激しく批判することになります。

しかしこのあたりについては、本題ではないので、次の「人は我祈りの為とて」で始まる明恵の文章に入りたいと思います。

 

人は自分の願いを叶える為にと、経典や陀羅尼[だらに]の一巻でも読誦[どくじゅ]する。(しかし、)焼香や礼拝を一度でもしなくとも、心と身体の 行いを正しくして、「あるべきよう」にさえ生活していれば、すべての諸天善神もその人を守護してくれるのである。願いも自然に叶い、望みも容易に遂げるこ とができるのだ。(自分の願いをなんとかして叶えられぬものかと)うるさく、せめたてるように(あれこれと)するよりも、(そのようなことなど)なにもし ないで、ただ(自分の日々の生活、心身を)正しくしてあるべきなのである。心が、(何事か自分の触手を動かすような)モノを見聞きすれば、(それをどうに かしようと)人をだまし惑わすようなことをなし、欲深で、身の振る舞いは、いつも、粗暴で、節度なく勝手気ままであっては、悟りにいたって阿羅漢となった 聖僧に依頼して、百万巻の経典を読誦させたり、一千億体の仏像を造ってみたとしても、口汚く経典を読む者に罰があたるようなものである。心が穢れていなが ら祈る者は、ますます悪い状況になっていくことはあっても、願いが叶うことなど、まったくありえない。にもかかわらず愚かな者は、(自分の)心をこそ正し もせず、己の自分勝手な欲望にのみ踊らされて、「祈りはきっと通じるだろう」(「念ずれば花開く」「信じ祈ることこそ尊い」など)と、やたらと願を掛け、 愚かで道理のわからぬ強欲な僧侶を請じて、心を悩まし、苦心惨憺して、(なんとか)祈りを叶えようとするが、(それは)地獄へ堕ちる業となるに過ぎないの であって、(私にはそのような愚かな振る舞いが)とても哀れに思えてならない。

 

明恵上人遺訓『阿留辺幾夜宇和-あるべきようわ-』を読む * 真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺

 

 

 

「念ずれば花開く」というように、祈りによって自分の望みを叶えようとすることにだけ目がいってしまう、信者や当時の仏教への警告、批判がこの文章の主題です。

 

明恵がこのような文章を書いた背景には、当時の仏教の偏った状態があったと考えられます。

それは明恵の考える仏陀の教えとは、かけ離れていくように感じたのでしょう。

願掛けや祈祷など祈りによって願いを叶えてもらうことが、仏教の役割ででもあると勘違いした信者たちの行動は、仏陀の教えそのものに目を向ける明恵にとっては仏の教えなどではないと映ったことでしょう。

 

そもそも本来の仏教には、祈りというものもなければ、もちろん神というものも存在しません。

神様もいないのに誰に祈るのでしょうか。

そもそも御利益を願うこと自体が、本来の仏陀の教えとは方向がずれてしまっています。

 

何かを求めることに問題があるとは言いませんが、求めることとそれが実現するかどうかとは別のことです。

しかし、自分が求めてしまうと、本来出来ないはずの期待を作り出してしまうのが人間の心理というものでしょう。

そこに、何らかの儀式を行えば願いが叶うと誘われると、それを信じたくなるというものです。

 

自分が何かを求めたとき、ひとはその目的に向けてエネルギーや注意を集中させます。

当然無関心でいるよりは、それが実現する可能性は高くなります。

しかしそこまでであって、それ以上のことは期待はできないのです。

 

「こんなに願っているのだから、叶えてくれてもいいじゃないか。」

そんなふうに、願いに人情を含ませるとき、本来期待できないことまで叶うことを期待してしまいます。

この訴えに異を唱えるのは、非人情だと感じるかも知れませんが、それでもやはり問題はあるのです。

 

そのくらいいいではないかと思われるかも知れませんが、それが叶っている間はよくても、思いの丈を込めた願いが実現しないとき、それは絶望や恨みを生み出すわけです。

 

仏教でいう「苦しみ」とは思うようにならない不満のことです。

「願い」が「苦しみ」の元を作り出し、叶わなければそれが「恨み」へと転じます。

 

 

「こんなに願っているのに、なんで叶えてくれないのか!」と思うとき、その原因を誰かに対する恨みに発展させてしまいます。

それが自分に向こうが、他人に向こうが、あるいは神なる存在に向けようが、一転して本来期待できなかったことを願ったことへのしわ寄せが襲ってくるわけです。

 

願いが強かったほど、その恨みなどの感情は大きなものになります。

願いに人情をかぶせた分だけ、かなわなかった時の被害は大きいのです。

時にそれは悲惨な事件を生んでしまいます。

 

そもそもなぜ願ったことは叶うべきだと決めてしまうのでしょうか。

そこから問い直す必要があるでしょう。

 

何かを願ってそれに応じた行動を起こしたとき、その行為そのものが目的でありゴールでもあるのです。

その後の結果は、私たちがすべてをコントロール出来るものではなく、期待できることではありません。

願いから結果までをひと塊につなげてしまって、それを自分の責任として抱え込んだり、あるいは御利益を期待する祈りに変えてしまうとき、自分では制御できないことを願うという重荷を背負い込んでしまうのです。

 

そんなものを抱えていては、とても軽々とした開放感は得られません。

結果がどうなるかを心配したり、祈願成就を願うことが実際の活動をすることと入れ替わってしまうのです。

 

私たちは、ゲームのコマではありません。

それが架空のゲームであれば、欲しいだけ役割や達成すべきものを積み込んでしまっても眺めていられるでしょうが、現実の自分にそんなものを背負わせるのはどんなものだろう、ということなのです。

 

思いの丈を込めた願いは、容易に怨念へと変化してしまいかねません。

それがどんなに地獄であるか、明恵は訴えているのでしょう。

 

「心を悩まし、苦心惨憺して、(なんとか)祈りを叶えようとするが、(それは)地獄へ堕ちる業となるに過ぎないのであって、(私にはそのような愚かな振る舞いが)とても哀れに思えてならない。」



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