★心配性
「師よ、私は心配です。どうしたらいいでしょう。」
「では、その心配とやらを、ここに持ってきて見せてみなさい。」
結果がわかるまでは、誰でも不安を感じるものですが、その不安がどんどん巨大になって他の事が手につかなくなる人もいます。
いわゆる心配性といわれる人ですが、そうでない人にとっては、笑って済ませられることが重大な問題になってしまうのです。
心配というのは、いいにせよ悪いにせよ結果が出てしまえば、本来は消え去るものでしょう。
しかし心配性の人は、ひとつ片づいた瞬間に次の心配事を作り出す。
心配がなくなるのが、これまた心配のタネになってしまうかのようです。
実際、心配することに依存症になってしまえば、それがないと落ち着かないのです。
他の人から見れば、最初は「そんなに心配しなくても」と優しい言葉をかけるでしょうが、いつもいつもそれが続くと、うんざりしていい加減にしてくれといって離れていくことになってしまいます。
しかし、なぜ心配性の人というのは、誰でもが抱くような心配がいつまでも消えないのでしょうか。
本来は、いくら心配していても、何らかの結果が出てしまえば、それは消滅してしまうはずなのです。
それが慢性的につづくのは、一種の依存症であり、心配することがその人のバランスを保つために何らかの役割を果たしているから、手放せなくなっているのでしょう。
心配すること自体は、その人にとっても苦痛ですが、それを我慢してでも何かから逃れたいと思うのでしょう。
心配性になるかどうかは、家族の心配する習慣をまねることを覚えて、引き継いできたというのが大きな要因であると考えられます。
「心配さえしていれば、悪いことは起こらないだよ」
「いつもうまくいくとはかぎらないよ」
「親になってみれば、心配することがどういう事かわかるだろう」
「うまくいきすぎるときは、心配しておかないとしっぺ返しが来るよ」
「どんなにお前のことを心配しているか、わかってるのかい」
「心配しないなんて、思いやりに欠けているんだ」
このような言葉は、「おまえも心配しなさい。そうすれば私が守ってあげよう」という依存関係を作り出します。
子どもにとっては親とのいい関係を維持するためには、自分も心配することを身に付けることが必要になってしまうのです。
大人になってからも、あなたが引き続き無力な存在であって欲しい、そう望む人は親に限らず、何人も登場してくることになります。
しかしそれらの人がどう考え、感じるかは、その人達の問題です。
あなたは、「そのようなひとがいるから、自分はそれに答えなければならないのだ」といって現状を維持することを断ち切らないと、心配性は解決しません。
ほかの人が何をしようが、あなたは心配に自分を巻き込むのを拒否することはできるわけです。
それほど大きな影響はないから、心配性でもいいんだ思うかも知れません。
しかし心配は、どっちに転ぶかわからないことには、参加しないあなたを作り出します。
それでは、冒険や楽しめることがなくなってしまう。
どこかで聞いたことがあるいいまわしですが、
死ぬ前にもっと心配しておけば良かったと嘆く人はいない。
もっと冒険しておけば良かったと嘆くのだ。
★心配性2/行動できない
心配というのは、いいにせよ悪いにせよ結果が出てしまえば、本来は消え去るものでしょう。
しかし心配性の人は、ひとつ片づいた瞬間に次の心配事を作り出してしまうようです。
そんな心配性の人の中でも、行動を起こすことに抵抗を感じて動けなくなってしまうタイプがあります。
心配性だから動けないという言い方も出来ますが、実は自分から行動を起こすこと自体に問題を抱えているのかもしれません。
行動できない人の原因のひとつには、決断するのが恐ろしいというのがあります。
結果が怖くて決断を下せないので様子を見て先延ばしにするのです。
行動しようとするのをストップさせるもの、そこには何か元になる原因があるはずですね。
「思いつきでしゃべらずに、話す前に考えなさい」
「いい加減なことをして後悔するのは自分だからね」
「本当にそれで大丈夫なの?」
「何事も慎重に準備してからやりなさい」
「あわてる乞食はもらいが少ない」
「どんなときも気を許しちゃダメだよ」
「本当に必要なときだけ実行しなさい」
「調子に乗ってるんじゃないよ」
このようなメッセージは、本来は子どもの安全を願っての言い回しなのでしょうが、後々私たちの行動を起こす決断を鈍らせる働きを作り出します。
このくらい言っておかないと何をするかわからないと親は心配なのかもしれませんし、そういわないといけないタイプの子どもだっているでしょう。
しかし親が心配性だとちょっとしたことにも、このような言葉が反射的に出てくる場合もあるわけです。
何かにつけてこのようなメッセージを聞いていれば子どもは行動する代わりに心配することを覚えてしまうかもしれません。
「思い切ってやってごらん」というべきときにも、その影で「よく考えてからね」と言ってしまうのです。
心配することが行動の代償行為になってしまうのは、行き過ぎた反応の仕方です。
行動することにはリスクが伴いますが、リスクを適切にとらえて判断することと、過剰に怖がって動けなくなることの間には大きな違いがあります。
その上「行動しない」という選択にもリスクはあるということも知っておく必要があります。
取り越し苦労というのは、勝手に自分で未来を予測して、それも悪いことが起こる方を予想してしまうわけです。
ですが、やっている本人にとっては、公平に未来を予測しているつもりになっています。
行動に移すことをためらいがちな人は、行動の代わりに、このゆがんだ未来予測に熱中してしまうのです。
またそのような人は、一生懸命未来を予測して完璧な仕事をやろうとしているのに、なぜいい加減な予測で行動してしまう人がいるのだろうと考えて、逆に心配しない人を非難したくなったりします。
ですが取り越し苦労というのは、どう考えてもエネルギーの使い方を間違えています。
行動に移した方がいろんな選択肢が増えて、思いもしなかった展開も待っているものです。
少ない可能性しか選べず、しかも悪い方の予測ばかり採用していて、それがよりよい結果に向かえるとは思えません。
それに「取り越し苦労」がまちがったやり方である証拠とでもいえるのは、その人の心身にも悪影響を与えるだろうということです。
心配性ではなかなか活動的になれませんし、心配ばかりしていると落ち込んできたり身体の調子も悪くなりがちです。
「杞憂(きゆう)」という言葉がありますが、これは天が崩れ落ちてきはしないかと心配した人の故事からきた言葉ですね。
「取り越し苦労」というのは、このようなたぐいの話です。
自分の心配はもっと現実的だといわれるかもしれませんが、いくら身近な予測でも未来は完全に予測できないことにかわりありません。
行動することは、やってもやらなくても100%満足する結果にはならないものです。
予測ばかりして様子を見ているだけでは何も変わらないだけでなく、新しい機会をどんどん失い続けます。
もちろん場合によっては、あえて行動しない選択の方が正しい場合もあります。
しかし、やらなかったことを後悔するようなら、あなたのやるべきことは「取り越し苦労」ではなく行動することにあります。
自分が行動しない理由が根拠のない心配からくるものに思えてきたら、目をつむってでも行動してみることです。
あなたは本当は行動しないでいることに、自分でもいら立ちを覚えているのです。
しかしそれでも行動しないことで、さらに予測をより悪いものに見せ、より恐ろしいものに変えてしまいます。
今度自分が「取り越し苦労」を始めたと気がついたら、その心配することでどんな情報や結論が導き出されたかを確認してみましょう。
そして、それが何の役にも立っていないことがわかったら、小さなことでもいいですから「保証のない不完全な行動」を1つ実行してみましょう。
それもあくまで結果を予測しないでやることです。
その時の自分を評価したり分析したりせず、ただ行動してみます。
実験のつもりで、どんな結果になってもいいと思って行動し、しばらく我慢してそれを続けてみるのです。
そしてそれが続けられたら、結果が良くても悪くても、新しい行動に踏み切れたことで自分を褒めてあげることです。
どのようなことに目を向けるかも大事ですね。
悲観的な人が考えがちなのは、
▼今は実現不可能なことなのに、何とか出来ないか考え続けてしまう。
▼過去の失敗をあれこれ思い起こして後悔する。
▼失敗の原因がたとえ変えようのないことだと明らかなのに、どこかに納得する理由がないか探し求めてしまう。
これらを方向転換してみましょう。
▲今すぐ実現可能なことだけに目を向ける。
▲過去にうまくいったことを思い出して、今に生かせないかを考えて見る。
▲失敗の原因として自分に変えられることだけをチェックしたら、あとは成り行きにまかせて考えないで行動する。
あの時は良かったと思い出すのはどんなときだろう?
あれこれ迷って結局やらなかったとき?
思い切って行動できたとき?
結果が悪かったことよりも後悔するのは、
「自分を生きなかった」という後悔の方だ
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心理療法006:心配症(1,2)001
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